2014年3月31日月曜日

「英語にハマりませんか?」No.96

仕事の合間ということもあり、また、春の訪れでうろちょろと出かける機会も
増えて、Economistのような、中身の濃い、ひねった記事を見る時間がないので
久しぶりにブルームバーグという証券経済·金融情報の配信事業を行っている
会社のサイトを見ました。

前にも紹介したと思いますが、刻々と変わる政治経済のニュースに加えて、
割と下世話というか、ゆるいネタも提供してくれるのが面白いです。

今回目を惹いたのは、「What makes candy crush so addictive」(キャンディー
クラッシュになぜはまってしまうのか)というビデオのレポートです。

このゲーム、私はやったことがないのですが、スマホでやっている人をよく
見かけます。このレポートによれば、1億人近い人がプレイしているとのこと。

It takes minutes to learn and lifetime to master

ということで、遊び方はすぐに覚えられるが、完全制覇には大変な時間がかかる
のが特徴だそうです。

Players can have an immediate sense of accomplishment
(達成感がすぐ得られる)

のが大きな魅力であると同時に、ゲームのレベルはおよそ2週間ごとに追加
されるため、

total mastery of the game is elusive

であると。「elusiveというのはつかまえどころがないといった意味ですが、
マスターするのは至難の業というところですかね。

それから、飽きないための仕掛けとして

After you use up all your lives, candy crush prevents you from playing 
it again for up to 24 hours
(プレイできる回数を「lifeという主人公の命という言い方で数えるわけですね)。

ずっと連続してプレイできないことで、

You can’t binge on the game and get tired of it
(「binge」-好きなだけやる)、

That lengthens the game’s appeal
(ゲームの魅力がより長く感じられる)

という効果があるとのことです。


ゲームのもうひとつの魅力は「one-handed play」にあるようです。

multi-tasksを行うことが可能であると。例として、このレポートで挙げているのが

You can eat while you play
ゲームしながら食べなくてもいいじゃないと思いますが)、

そして、

You can go to a meeting and not pay attention while you are playing!
(これは絶対だめですよね。くれぐれも真似をしないように。you will get fired!

だそうでーす。これはビデオですので、再現画面(?)も出ています。

そして、締めとしては、
それでもいずれは新しいゲームが出てきて、Candy Crushの人気も衰えるだろう
ということで、

After all, you can’t live on candy forever
(誰もキャンディーだけでは生きられない)

とありがちな洒落で締めくくっています。

ということで、今回は甘い話題をやっつけてみました。

2014年3月26日水曜日

「英語にハマりませんか?」No.95

最近の記事はウクライナばかりで、Economistは特に力を入れていますが、私はひねるのが
好きなせいか、あまり注目を浴びていない国に興味を惹かれます。今回はちょっと前の記事
2/15)ですが、アルゼンチンについて取り上げます。

The parable of Argentina
There are lessons for many governments from one country’s 100 years of decline

parable」とは一体なんぞやと調べてみると、

a short, simple story, usually of an occurrence of a familiar kind, from which 
a moral or religious lesson may be drawn

ということで、日本語では「寓話」ということになりますが、「アルゼンチンの(という)寓話」
という訳はぴんと来ません。

脈的に見ると「教訓」でもよいと思われますが、これだと次に出てくる「lessonも教訓に
なってしまいますのでどうするか?考えどころです。

さあ、100年間低迷というか、没落している国からどんなことが学べるのか?

記事は

A CENTURY ago, when Harrods decided to set up its first overseas emporium, it 
chose Buenos Aires.

から始まります。
100年前ハロッズが最初の海外支店を開設したのがブエノスアイレスだそうです。

emporium」-中心地/百貨店

そして、

In 1914 Argentina stood out as the country of the future.

ということで、「前途洋々たる国だった」という感じですかね。

1人あたりGDPはドイツ、フランスを上回り、豊かな農地、温暖な気候な民主国家、そして、
タンゴです。

Immigrants tangoed in from everywhere. For the young and ambitious, the choice 
between Argentina and California was a hard one.

tango」-辞書的には無いですが、踊るようにやってきたという無理やりな比喩的表現。
そうか、カリフォルニアと同じくらいの人気だったのだ!

いまでもアルゼンチンには魅力的なものがたくさんある、パタゴニアからメッシまで、そして、

The Argentines remain perhaps the best-looking people on the planet. But their 
country is a wreck.

と落としてきます。
ハロッズも1998年に閉店し、経済はご存知の通り度々危機に見舞われている。

ということで、

Why dwell on a single national tragedy?
(なぜ、アルゼンチンにこだわるのか)

という話に移ります。

世界は以前のように共産主義や全体主義に走る心配はもはやない一方で、

The real danger is inadvertently becoming the Argentina of the 21st century
Slipping casually into steady decline would not be hard.
(本当の危険は、アルゼンチンのように定常的な衰退になんとなく落ち込んでしまうことに
ある)

というのがEconomistの「concernです。

Extremism is not a necessary ingredient, at least not much of it: weak institutions, 
nativist politicians, lazy dependence on a few assets and a persistent refusal to 
confront reality will do the trick.

つまり極端な思想はあまり問題ではなく、弱体化した体制、保護主義的な政治家、過去の
資産への依存、現実に目を向けないといったことがこうした事態を招くと。こう読んでくると、
日本も同じ運命をたどりつつあるのかなとふと思ってしまいます。

確かに不運も重なったが、

Ill fortune is not the only culprit, though. In its economy, its politics, and its 
reluctance to reform, Argentina’s decline has been largely self-inflicted.

culprit」は結構よく使う単語ですね。

つまるところ、アルゼンチンの衰退は自業自得の面が大きいと。

中でも、アルゼンチンの強みである農産物が逆に災いのもと(curse)となっている。

1世紀前は輸出用の牛肉の冷凍技術をいち早く取り入れたものの、付加価値を付ける努力を
怠ってきた。

even today, its cooking is based on taking the world’s best meat and burning it
(いまだに焼くだけだという厳しい指摘です。)

そして、非効率な産業をひたすら保護する閉鎖的な経済を維持してきたという説明です。

それから、世界に先駆けて導入した民主主義を守り育てるための政治制度を築くことを怠り、
軍による介入(クーデター)を招いてきた。

Unlike Australia, another commodity-rich country, Argentina did not develop 
strong political parties determined to build and share wealth: its politics was 
captured by the Peróns and focused on personalities and influence.

同じように資源の豊かな国オーストラリアのように強固な政党制度を育ててこなかった)

ここでは「commodity-rich」となっていますが、「resource-rich」でもOKでしょうね。
commodity」というと産物になりますが、オーストラリアの場合は鉱産物も大きいですから。
日本語的には「資源大国」といった表現が通りやすいですね。

アルゼンチンではまた汚職もひどい。
Graft is endemic: the country ranks a shoddy 106th in Transparency International’s 
corruption index.

shoddy」-106番目という「お粗末さ」というところでしょう。

こうした状況に対して、アルゼンチンの指導者は、カリスマ的なリーダーとか、ひたすら手早い
(というか安直な)解決策を求めてきた。

Argentine leaders prefer the quick fix—of charismatic leaders, miracle tariffs 
and currency pegs, rather than, say, a thorough reform of the country’s schools.

ここで

Argentina’s decline has been seductively gradual.
アルゼンチンの衰退は感心するほどゆっくりと進行した)

という面白い表現が入ります。

Throughout its decline, the cafés of Buenos Aires have continued to serve 
espressos...... That makes its disease especially dangerous.

つまり、蛙を水の入ったポットに入れて下から火であぶるとだんだん温度が上がってくるので
気が付いた時は熱くなって死んでしまうというのと同じですかね。

先進国も決してこうした傾向が無いわけではない(「The rich world is not immune.」)
カリフォルニアだってそうだし、イタリアだって似たような病に罹っていると。

それでも、新興国の方が危険である。多くの国が商品輸出に力を入れているが、国内の
体制の整備を怠っている(「Too many countries have surged forward on commodity 
exports, but neglected their institutions.」)ロシア、ブラジル、トルコと例は続きます。

これまで「institutionsという言葉が何度も出てきます。

制度ということになりますが、ここで使われている文脈的には「国の政治制度/体制」という
訳がもっとぴったり来るようです。

ということで、結論に入ります。

The lesson from the parable of Argentina is that good government matters
Perhaps it has been learned. But the chances are that in 100 years’ time the 
world will look back at another Argentina—a country of the future that got stuck 
in the past.

アルゼンチンの実例から学べる教訓は、よい政府は重要だということである。
そんなことは分かっているというかもしれないが、これから100年の間に、将来がありながら、
過去の栄光にしがみついている別のアルゼンチンについて世界が回顧している可能性は
高いだろう。

と訳してみました。

good government matters」―簡単な表現ですが、ポイントをついています。
しっかりとした政治制度/体制を築き、維持するのが大事であると。

it has been learned」-教訓として学ばれている、つまり、そんなことは分かっている
としてみました。

この教訓は個人にも応用できるのかな?

私も最近ゆっくりと衰退してきているような気がします。

2014年3月24日月曜日

「英語にハマりませんか?」No.94

仕事の合間にエクササイズという感じで「Environmental Engineering」という専門書を
読んでいました。前から資料として買っていた本の1冊です。

専門書と聞くと難しいと思われるかもしれませんが、大学の基礎編の教科書として
使われているもので、素人にも分かりやすく書かれています。
600ページ以上ある割には値段も比較的安い(20年ぐらい前で3,900円)と思います。

私自身は法律や地理といった文化系の人間で、技術にはあまり明るくないのですが、
それでも専門書を少しは読むきっかけになったのは、仕事上の必要からです。

今のようにネットであらゆる分野についての情報が一瞬で分かる時代とは異なり、私が
翻訳を始めたころは、前にも書きましたが、分野別の用語辞典でエッチラオッチラ引く
というえらく手間のかかる時代でした。

私も最初はさまざまな用語辞典を買い込み、あるいは、図書館に行って調べていていた
のですが、アメリカ留学時代の経験から、該当する分野の大学の教科書を買って読んだ
方が系統的な知識や表現が得られるし、結局効率的ではと思い立ちました。

当時は、日本の企業が海外生産を開始したころで、現地の従業員に教えるための
資料作成のニーズが高まっていた時代です。各社が持っている日本語のマニュアルや
技術解説書をとりあえず英語に訳して使おうということで、製造手順から会計基準まで
さまざまな内容の文書をまるごと1冊翻訳するという仕事が結構あったことも、こういう
発想につながったのかと思います。

最初に英文の専門書が資料として役立ったのは忘れもしない「非破壊検査」マニュアル
の翻訳です。

詳細は省きますが、X線とか色々な方法で材料の強度を試験する、生産には欠かせない
大事な検査です。資料が無いかと洋書店に行ったところ、Mechanical Engineering 
Handbookという分厚くて、お高い(数万円したと思います)書籍に載っているのを
見つけました。

非破壊検査関連でもう少し安い本もあったのでしょうけど、何せこの本、機械工学に
関するあらゆることが解説されており、その頃よく仕事をもらっていた鉄道車両関係の
情報もあったので、今後役に立つに違いないということで、エイヤーと買っちゃいました!

結果としてこの購入は大正解で、この本はその後色々な分野の翻訳の際、非常に役に
立ちました(早く言えば元を取ったわけです)。

何せ、ある技術について専門用語を使って懇切丁寧に解説されているので、ちょっと
変えれば使える部分もあるし(一種のコピペですが)、どういう風に説明していくかという
見本でもあるわけです。

つまり、日本語を英語に変換するのではなく、日本語を読んでそれに対応する英文を
書く(最初は、お手本の文章を借りて)というアプローチでの翻訳にしたわけです。

ネットで一瞬に必要な情報を検索し、一瞬で好きな箇所がいくらでもコピペできる時代に
なった今、懐古的といえますが、古き良き時代だったなと思うと同時に、多少手間が
かかっても自分の探している情報が見つかった時の喜びが何とも忘れられません。

ということで、

初老の翻訳者の回想録はこれぐらいにして、肝心の「Environmental Engineering
の中から、使えそうな表現を抜き出して紹介したいと思います。


まず、Introductionの冒頭からいきなり引用します。

Environmental engineering has been defined as the branch of engineering 
that is concerned with protecting the environment from the potentially deleterious 
effects of human activity, protecting human populations from the effects of 
adverse environmental factors, and improving environment quality for human 
health and well-being.

has been defined」ということは、これまで定義されてきたということですかね。
現在もこのような定義だと思いますが。

concerned with …. ing」という構文は面白いですね。「concerned with名詞」と
理解しているので、動名詞句(そんな言葉は無いでしょうが)もありなのだなという
のは、表現の幅が広がり、ちょっと使ってみたくなります。

improving environment quality for human health and well-being
健康と福祉のために環境の質を向上させるというのは紋切り型の表現ですが、
お堅い役所のレポートの英訳の際に使えそうな感じです。

もうひとつ行きましょう。

上の文書の次のパラグラフ最後の文章です。

An understanding of the nature of the environment and of human interaction 
with it is a necessary prerequisite to understanding the work of the environmental 
engineer.

なるほどunderstandingに不定冠詞を付けるのか。うーむ、この辺、何年英文と
付き合ってももうひとつ分からないというのが正直な感想です。

a necessary prerequisite
-ちょっと「necessaryが余分な気もしますが、強調という意味ではこれでもよい
ということですね。「大前提となる」という感じかな。

なんだか、私以外には興味を持つ人が少なそうな感じがするので(やっと気が付いた
かって!)この辺にしておきます。

2014年3月20日木曜日

「英語にハマりませんか?」No.93

年度末の仕事が入り、また、春めいてきてなんとなくソワソワということで
外出も増えて、ちょっと間が空きました。

そんな中でびっくり、嬉しいことがありました。

私の大事なゴルフ仲間(というか、私のようなヘボゴルファーに我慢強く
付き合ってくれて、貴重なヒントもくれる大先輩)からこのブログを見つけた
ということで、がんばっているねとお褒めをいただきました。

いやー、こんなディープなブログを見つけてくださってありがとうございます!
(姪御さんが第一発見者とのこと)ネットというのは素晴らしいものですね。
まさに「a pleasant surprise!」(嬉しい驚き)です。

ということで、

発見のお礼といってはなんですが、急きょ企画を変更し、ゴルフにまつわる
英語をちょっとひもといてみたいと思います。

先日の飲み会で話題になった、前の組にどの程度ついていくべきかという
ルールについての解説がGolf Etiquette for Beginnersということで
ネットに載っていましたので引用します。

Avoid slow play(スローなプレイは避けるべし)」
という項目で次のように書かれています。

-------------------------------- 
When your group is not keeping up with the pace of play of the group 
in front of you」
(「前の組のペースよりも遅れている場合は」という、なかなか丁寧と言うか、
もってまわった言い方です)

「Walk at a reasonable speed between shots.」
(適切な(reasonable速度で歩くとありますが、多少早足で歩きましょう
というニュアンスですね)

「Begin planning your next shot as you approach the ball by studying 
the strength and direction of the wind.」
ボールに近づく前に次のショットについて風の強さや向きを見て考えて
おきましょう)

When you reach your ball, check the lie, select your club, visualize 
your swing and shot, and then play your shot.」
(ボールの落下地点に来たら、ライをチェックし、クラブを選択し、イメージ
ショットをしてみて、それから打ちましょう-この一連の動作をとんとんとやれ
ということでしょうね)

- From the time you select your club until you actually hit your shot, 
you should take no more than 30 to 45 seconds.
(クラブの選択から実際のショットまでは30-45秒で済ませましょう)
you should take...」というのが面白いですね。

 - If you aren't ready to play when it is your turn, encourage one of your 
fellow players to play.
(そして、自分の番が来たのに準備ができていないときは、他のプレイヤー
に先に打ってもらいましょうーこれで「encourage」を使うのが勉強になります。
働きかけましょう/促しましょうという上品な言い方です)

まあ、当たり前と言えばそうですが、気を付けたいものでございます。
--------------------------------

といったところで、

今回は、ウクライナを初めとする激動の世界に目もくれず、自己中の話題
いつもそうか?)をお送りしました。

2014年3月7日金曜日

「英語にハマりませんか?」No.92

今回はEconomistの先週号(Feb 22)記事から、水産資源の保護を訴える記事を取り上げます。

Governing the oceans
The tragedy of the high seas
New management is needed for the planet’s most important common resource

海洋の秩序ある管理(governingが必要だというテーマで、世界で最も重要な共通資源の
新たな管理を提案しています。

まず、1968年にハーディン著の「コモンズの悲劇」という本に述べられている、皮肉な原理
――資源が多くの人に共有されると、それを利用するのは各個人の利益となるため、
全体として乱獲状態となり、集団としての長期的な利益はないがしろにされる――を紹介し、
それによって海洋資源に重大な損害が出ているという書き出しです

「In 1968 an American ecologist, Garrett Hardin, published an article entitled 
“The Tragedy of the Commons”.....when a resource is held jointly, it is in 
individuals’ self-interest to deplete it, so people will tend to undermine their 
collective long-term interest by over-exploiting rather than protecting that asset. 
Such a tragedy is now unfolding, causing serious damage to a resource that 
covers almost half the surface of the Earth.」

公海は共有財産(the high seas are a commons)であるが、魚の捕獲は誰にも許されて
いる。そして、全ての人々にとって経済的な重要性は大きい(The high seas are of 
great economic importance to everyone)。

タンパク源として牛よりも重要だし、海洋生物のDNAを利用する特許の数は急速に増加
している(The number of patents using DNA from sea-creatures is rocketing)。

ここでrocketingというのが面白いですね。

ところが、公海の状況は悪化している(Yet the state of the high seas is deteriorating)。

公海にいる魚類の2/3は乱獲されており、各国の管理下にある海よりもひどい。

さらに、微生物レベルでも変事が見られる(strange things are happening at a 
microbiological level

The oceans produce half the planet’s supply of oxygen, mostly thanks to 
chlorophyll in aquatic algae. Concentrations of that chlorophyll are falling. 
That does not mean life will suffocate. But it could further damage the climate, 
since less oxygen means more carbon dioxide.

(そして、海は地球が供給する酸素の半分を生み出している。それを行っているのが
水生藻類に含まれるクロロフィルであるがその濃度が低下している。人間が生きていく
上では危険ではないが、二酸化炭素のさらなる増加になる。)

その上で、このような重要な共有財産の枯渇という悲劇を避けるには、個人の短期的な
利益と全人類の長期的な利益をバランスさせるためのルールと制度が必要と指摘して
います。

「For tragedies of the commons to be avertedrules and institutions are needed 
to balance the short-term interests of individuals against the long-term interests 
of all users. That is why the dysfunctional policies and institutions governing 
the high seas need radical reform.」

つまり、もはや機能していない公海の管理に関わる政策や制度の抜本的な改革であると
しています。

具体的には3つの点での改革を提案しています。

まずは、漁業への補助金を止めること。

Fishermen, who often occupy an important place in a country’s self-image, 
have succeeded in persuading governments to spend other people’s money 
subsidising an industry that loses billions and does huge environmental
damage......That should stop.

漁業従事者は自国のイメージという意味で重要な地位を占めることが多く(国の経済
活動の象徴ということですかね?農業と同じく)、巨額の損失を出しながら、環境に大きな
損害を与える産業に対して国民の税金を使って補助を受けてきている(原文では成功
する、説得するという動詞が入るが、日本語では必ずしも必要ないかも)

燃料価格への補助とか、漁港の整備とかですね。

2つ目は、漁船の登録を義務付けることだそうです。

知らなかったけど、船舶は全て登録されていると思っていましたが、漁船は除外されて
いるようです。

Economistは、登録を義務づけて違法な漁獲を取り締まるべきであると提言します
海を荒らしまわっているのはソマリアの海賊だけではないと。らしいですね。

Governments should make it mandatory, creating a global record of vessels 
to help crack down on illegal high-seas fishing. Somalis are not the only 
pirates out there.

第三は、海洋資源保護地域の拡大です。

地球の陸上面積の約1/8が法的な保護(国立公園など)を受けているのに、海では1
以下にすぎない(An eighth of the Earth’s land mass enjoys a measure of legal 
protection (such as national-park status). Less than 1% of the high seas does.

ここ数年の間にさまざまな国が自国の経済海域内に保護海域を設定している状況に
鑑みて、公海でも保護海域を設定することで漁業資源の回復が期待できるとしています。

それでも、
政策の改善だけでは十分ではないと主張します(But reforming specific policies 
will not be enough.)。

同時に必要なのは、各国の資源管理体制の改善だと(Countries also need to 
improve the system of governance)。

ほとんどの国が締結している海洋保護法(なんとアメリカは含まれていない!)、
法的に執行するための仕組みが無い。一方で、個々の活動(海運、漁獲その他)を規制
するための機関が設立されており、重複と利害衝突が生じている。こうした仕組みに
加盟していない国や個人は刑罰を受けることなく、ルールを破っている。

そして、海洋全体を管理する仕組みが無い(The mandates overlap and conflict
Non-members break the rules with impunity. And no one looks after the oceans 
as a whole.)という厳しい指摘です。

ということで、

Economistが提言するのは「世界海洋機構」です(A World Oceans Organisation 
should be set up within the UN)。

国連がその加盟国の個々の利益に優先する集団的な利益を推進できなければ、存在
価値は無いと、もっともな指摘です(After all, if the UN cannot promote collective 
self-interest over the individual interests of its members, what is it good for?

とはいっても、
そうした機構の設立は時間がかかる。一方で対策は今必要である。

ということで、
とりあえずの措置として海洋保護法の強化が提案されています(So in the meantime 
the law of the sea should be beefed up.

海洋保護法が一定の効果を発揮してきたと評価する一方で、30以上前に議論されて
いることから、生物多様性などの環境に関する問題に対応できていないし、色々な
地域にある漁業規制機関は漁業関係者が主導権を握っており、サメに養魚場の管理を
任せているようなものだ(As it is the sharks are in charge of the fish farm)と
またまたキツーイ一発です(今回この手の皮肉が多い)。

ということで、結論として、
海洋保護法だけでは問題は解決しない。なぜなら、海洋の問題は陸上に原因があるから
と指摘した上で、制度改革によって公海の管理を強化すれば乱獲の規制が期待できる
としています。

そして、最後は簡単なステートメントで締めています:

The high seas are so vast and distant that people behave as though they 
cannot be protected or do not need protection. Neither is true.

なかなか使えそうな表現ですね。

そして、損害を与えた人類はそれを改善することができるとします(Humanity has 
harmed the high seas, but it can reverse that damage)。

またそうしない限りは
Unless it does so, there will be trouble brewing beneath the waves」と
ちょっと訳しにくい表現で締めくくっています。