2014年12月27日土曜日

「英語にハマりませんか?」No.125

もう今年も終わりです。

ということで、年末に取り上げるのは、
Economistから、アメリカの弁護士の給料、という景気のよさそうな話題です。

Lawyers’ pay
Bonus babies
Why big end-of-year payouts for junior attorneys are a double-edged sword

まず、「bonus babies」とはなんぞやと調べてみたら、

the not-particularly-complimentary term applied to describe a player receiving 
a particularly large signing bonus upon turning pro. They were called “babies”
 because of their youth......

つまり、元々はルーキーのスポーツ選手に支払われる多額の契約金を意味し
褒め言葉という訳ではないそうです。

これは、日本でも、野球の選手がまだ活躍するかどうか分からないのに1億円といった
契約金を支払われているので分かります。

見出しとしては、米国の法律事務所に入ったばかりの弁護士(lawyer)に多額の
ボーナスが支払われている、しかし、それは諸刃の剣であると言っているのですが、
さてどういう意味合いでしょうか。

本文は、米国の大手法律事務所の若手弁護士は過去8年間大きな昇給を受けて
いなかったという書き出しで始まります。

With law-school graduates plentiful and demand for corporate legal work 
tepid, the standard starting salary has been stuck at $160,000 a year since 
2007. Heartbreaking, isn’t it?

ロースクールの卒業生は多く、企業からの法務サービスへの需要が今一つ盛り
上がらないという状況を受けて、新規採用者への初任給は2007年以来16万ドルに
留まってきた。かわいそうでしょうと皮肉たっぷり!そんなにもらっていたのか!

ところが、先月から年末のボーナスの引き上げ競争が突然始まったそうです。

(「.....in the past month an unexpected financial arms race has 
erupted over year-end bonuses.

その先陣を切ったのが、Simpson Thacherという法律事務所です。
2007年に初任給を最初16万ドルに上げた事務所でもあります。

今年米国で上場した中国アリババ社の代理人となって大儲けしたようです。

それを見たライバル事務所は直ちに追随したわけです。
(「Most of Simpson’s competitors promptly matched its scale.」)

ということで、今年の大盤振る舞いは、法律事務所にとって主要な収入源である
M&Aの増加、そして、堅調な株式相場に刺激されてヘッジファンドなどの
法律家への需要が高まったというファンダメンタルズの改善を反映しているわけです。

一方で、法律事務所の将来への見通しは決して明るいものではない。

顧客はだんだん渋くなっている。以前は若手弁護士による比較的簡単な法務
サービス(rote work)について支払ってくれたものですが、今は自動化したり、
安いところに外注している。

さらに言えば、大手企業は、複数の法律事務所に競合させてコスト削減を
図っているようです。
(「big clients that typically used to be loyal to one firm now force lawyers 
to bid against each other for work.」)

ということで、今年はかなりのボーナスを支給したものの、基本給については
挙げていない。業績が低下した時に下げにくい。
(「.......though firms are happy to dispense beefy bonuses, they still 
refuse to raise base salaries, which would be harder to cut in a downturn.」)

結論として、若手弁護士は、ボーナス景気に沸いているかもしれないが、
その裏で、ボスは将来ビジネスが低迷するリスクを彼らにシフトしようとしている。
(「......their bosses are shifting onto them a greater share of the risk 
in an industry on the brink of disruption.」)

なるほど。
ここにもグローバル化の波が押し寄せていますね。

2014年12月20日土曜日

「英語にハマりませんか?」No.124

お寒くなってまいりやした。
暖冬と言っていたのがウソのようです(というか、ウソでした)。

という前振りとは関係なく、今回は久しぶりにEconomist誌の記事を取り上げます。


最新号の巻頭記事は、アメリカの警察に関わる問題です。

Criminal justice
America’s police on trial
The United States needs to overhaul its law-enforcement system

ということで、Economist誌にしてはストレートな(私の偏見かな?)表題です。

最初のパラグラフは、オハイオ州のスーパーマーケットで売っていたエアライフルを
手に取っていた男性が警察に銃撃されて死亡、それでも大陪審では銃撃した警官を
起訴しなかったというエピソードが紹介されます。

Most people have probably never heard this story, for such tragedies are disturbingly common: America’s police shoot dead more than one person 
a day (nobody knows the exact number as not all deaths are reported).

disturbingly common
辞書的には「心をかき乱す」とか「気がかり」ですが、ここでは
嫌になるほどありふれた出来事だから」という訳がよいかなと思います。

へー、アメリカでは平均で毎日1人が警官に射殺されているとは!

それでも、今回報道されているような事件は、さすがに関心を集め、全米での
デモに発展したようです。

これまでのところは、人種差別(特に黒人)の問題としての非難や論議が高まって
おり、確かに白人警官が黒人の被疑者(?)を射殺するという構図なのですが、
Economist誌は別の視点から分析しています。

つまり、

There is ……. another prism through which to examine these grim stories
the use of excessive violence by the state.

プリズムという表現はいいですね。「異なる視点」ということですが、

use of excessive violence」とは、国家による暴力の過剰な使用、
言い換えれば、国家による過剰な実力行使かな。

ここで、アメリカの刑事司法制度について俯瞰的に見ると、

…….overall the country is an outlier for all the wrong reasons.
(全体として見ると、他の先進国に比べて悪い意味で突出した存在である)」

It jails nearly 1% of its adult population, more than five times the 
rich-country average.

そうなのです。私がアメリカで過ごした80代の初め、刑務所に収容されている
のは100万人というデータを見てびっくりした記憶があります。
日本では8万人ぐらいでした。判決が厳しいことも一因となっているようです。

その結果、「America’s police are motivated to be rapacious…….
(傲慢(自分達こそが平和な日常生活の砦であるという意味で)になっている)

さらに、

…….while other nations have focused on community policing, some
 American police have become paramilitary…….

なるほど、他の国が地域に根差した警察となることに力を入れているのに対し
アメリカはまるで軍隊のようになってしまったということですか。

特に、SWAT隊員の人数は、80年代の3,000人あまりから現在では50,000人に
増えている!その結果、殺傷するケースも増加している。

多くの人が武器の所有している結果、殺される警官も多いし、その犯人の
42%は黒人であるということで、警官が黒人に対して厳しい態度に出るのは
ある意味当然ではある。

3億丁も出回っている銃という状況を直ちに変えることはできないが、警官による
過剰な実力行使を減らす対策はあるとしています。
there are other ways to make the police less violent.」)

まずは透明性(transparency)。

全ての警察に射殺件数を報告(連邦政府に)させること。
そして、ボディーカメラを配布すること(ある程度行うようです)。

第二は「accountability」。

つまり、警官による射殺事件を捜査する場合には、同僚や地元で顔見知りの検察官、
陪審員が行っているが、外部の人間で構成される第三者機関に委ねるべきである。

To improve accountability, complaints should be heard by independent 
arbiters, brought in from outside.

つまり、責任を持って外部に説明できるような体制ということですね。
ごもっともですが、これも難しそう。

そして、最後は、
警察の重装備化を反転させる(「reversing the militarisation of the police」)、
つまり、警察が必要なのは、訓練であって武器の配備ではない(「The police need
 more training and less weaponry」)。

結論として、

アメリカは、現在もさまざまな点で他の国のモデルとなっている。
その価値観は、常識のある人々が広めたいと思うようなものだ。
(「Its values are ones which decent people should want to spread.」)

一方で、社会の根幹を支える刑事司法制度は、根深い問題をはらんでいる。
(「Yet its criminal-justice system, the backbone of any society, is deeply 
flawed.」。)

変えることは難しいが、久しく待望されている/すぐに行うべきである。
(「Changing it will be hard; but change is overdue.」)

Change is overdue」というのは、変化はとっくに起きているべきである、
つまり、今起こすべきであるということになりますか。

さてどうかな。
よっぽど何かきっかけがないとね(sigh!)。

2014年12月12日金曜日

「英語にハマりませんか?」No.123

お寒うございます。

以前に、カルチャースクールで米国短編小説の購読会に参加していると紹介し、
なかなか面白いと言いましたが、前言撤回します!

The Best American Short Stories」という毎年出ている本らしいですが、
まあなんといいますか、良く言えば一ひねりしてあるというか、なんか陰気で、
話の筋やテーマも分かりにくいし、寒い冬に部屋でひとり読むにはあまり
楽しくないというのが正直な感想です。

一方で、5-6人で分担して読んでいるので、皆であーでもない、こーでもないと
考えつつ読むという点は面白いです。こういう機会が無ければまず読まないと
思われる本に挑戦してみるのも新たな英語体験と、いささか無理やりですが、
まー、もう少し続けてみるかなと思っています(一種の我慢大会?)。


さて、毎日の読書で目に留まった表現や単語の紹介ですが、前にも触れました
Foreign Affairs」という隔月発行の外交専門誌を取り上げます。

米国による無人機(drone)での空爆の効果を検証した
Washington’s Phantom War」(ワシントンの空虚な戦争という感じですか)
という論文から次のような文章を紹介します。

One of the primary challenges in producing an accurate count of fatalities 
from drone strikes is the divergent incentives for U.S. officials and for militants: 
Washington claims that almost all those killed in the drone strikes are militants, 
whereas militants and locals often claim that the victims are civilians.
Foreign Affairs July/August 2011 p.13

パキスタンとアフガニスタンで米国が行っている無人機空爆の効果について分析して
いるのですが、ここでは、正確な死者の数を把握するのに一番の問題(課題)は、
米国とゲリラ側にとって「divergent incentive」があることと指摘しています。

これはどういう意味かと言うと、
米国とゲリラ側(といった方が戦闘員よりも正確?)では、正反対の戦果を強調したい
という動機がある(つまり、そういう傾向がある)と。

つまり、米国政府が、無人機の攻撃で死亡するのは戦闘員であると主張するのに対し
(空爆を正当化するために)、ゲリラや地元の住民は一般市民であると主張する
主張することに利益がある)ということですね。

divergent incentives」とは面白い表現です。
directly-opposed incentive」でもよさそうですが(ちなみに前者はインターネット
検索で出てきますが、後者についてはありません)。

もうひとつ、無人機攻撃の問題について、

Another problem with the drone strikes is that since they eliminate militants 
before they can be apprehended and questioned, the program precludes 
the possibility of gaining any useful intelligence from those killed.

という議論が出てきます。

なかなか冷徹な論調です。
問答無用で殺害してしまうから、尋問して情報が得られないというデメリットがあると。

さらに

Dead militants, of course, can offer no insights into planned operations.

なんじゃ、このインサートは。死んだゲリラからは、深い情報が得られないという、
凄い駄目押しですね。

これからなんとなく連想したのは、「良い....は、死んだ....」という表現です。

うろ覚えながら、ネットで検索すると、「The only good …. is a dead ….
という言い方にたどり着きました。

意味としては、「いい…は死んだ…だけだ,…にかかわっていいことはない」
ということだそうです。

その語源をたどると、米国西部人の間で使われた常套句

The only good Indian is a dead Indian.

に始まるそうです。あー、これも冷徹な表現で、完全に「politically incorrect」!

まあ、ひょっと連想した、うろ覚えの表現が瞬く間に探せるとはインターネットは
つくづく素晴らしいと感心して終わることにします。

2014年12月4日木曜日

「英語にハマりませんか?」No.122

今週は、ワシントンポスト紙電子版の記事を取り上げます。
ちょっと目に付いた面白い論説記事です。

Venezuela’s Downward Economic Spiral」(ベネズエラ経済の負の連鎖)

という表題で、南米ベネズエラの問題なのですが、書き出しはロシアから始まります。

VLADIMIR PUTIN pointed out that the Russian currency’s recent loss 
of value had a silver lining.

ということで、プーチン大統領によると、現在のルーブル安には良い点もあるようです。
Every cloud has a silver lining.」の変化形ですね。

つまり、ロシアの国庫歳入の多くが石油天然ガスの販売収入(ドル建て)から来ている
ため、ルーブル安で歳入が増加するという恩恵がもたらされているそうです。

…. a depreciating currency can allow a government to keep spending 
at home and cushion the shock.

一方で、同じく石油大国のベネズエラでは、正反対のことが起きているそうです。
なぜそうなるのか?

…. the government has insisted on maintaining a fixed, multiple-tiered 
exchange rate system that vastly undervalues the dollar.

ドルとの固定相場制に固執しているというわけです。

その結果、カラカスのブラックマーケットではドルが政府設定レートの17にもなり、
食料品などの物価は約60%上昇。しかも供給量は少なく、店の前には長い行列が。

どうも、借金の返済の関係でこうした政策をとっているようですが、この状況はまだ
しばらく続きそうです。

Perhaps the worst news for Venezuelans is that the next election, for parliament, 
is nearly a year away…. 

ということで、議会の選挙までにはまだ1年あるし(最悪のニュースと言われちゃね)、
大統領の任期も2019年まである。

こうなると、議会が解散できるのもある意味良いですね。

結論としては、

Barring a miraculous recovery of oil prices or a dramatic reversal of course 
by the government, the country’s downward spiral appears destined to continue.

barring ….」面白い表現ですね。
原油市況が奇跡的に回復するか、政府が劇的な方針転換をした場合を「除いて」という
ことになります。

こりゃ大変だ。