2013年12月28日土曜日

「英語にハマりませんか?」No.84

今年最後のブログということで、
Economist1221日号の巻頭記事を取り上げます。ちょい暗です。

The first world war
Look back with angst
A century on, there are uncomfortable parallels with the era that led to the 
outbreak of the first world war

angst」-心配、不安

ということで、
第一次世界大戦前夜と現在の状況は似通った(parallel)ところがあるよという警告を
発する記事です。

AS NEW YEAR approached a century ago, most people in the West looked 
forward to 1914 with optimism......」

という書き出しで始まり、

Globalisation and new technology—the telephone, the steamship, the train—
had knitted the world together.

という状況も似ていたと。

Europe’s economies were so integrated that war was futile

でもあった。

futile」という言葉を使うのは面白いですね。戦争を想起することは時間の無駄だった
という感じですかね。

それでも1年も経たないうちに第一次世界大戦が始まりました。

The driving force behind the catastrophe that befell the world a century ago 
was Germany…….

ということで、直接の原因はドイツだったが、

Yet complacency was also to blame

befall」―起こる、降りかかる
complacency」-充足感(平和で戦争などは起きるはずがないという安心感)

戦争を懸念する声が出なかった理由は、英国とドイツが最大の貿易相手国であり、

there was therefore no economic logic behind the conflict……

という判断だったようです。

それから100年、
人類は失敗から学び、経済危機や核戦争の脅威にも何とか対処しているが、

Yet the parallels remain troubling

ということだそうです。

Economist誌によれば、当時の英国に相当するのがアメリカ。ドイツが中国。
そして、日本はフランス(an ally of the retreating hegemon and a declining 
regional powerという、ありがたくない説明がついています)。

もちろん、状況や条件が当時とまったく同じというわけではないが(中国はドイツほど
領土拡張の野心を持っているわけではないし、アメリカも強大な防衛力を維持している)、

The most troubling similarity between 1914 and now is complacency

だそうです。

ビジネスマンはお金儲けに忙しいし、政治家はナショナリズムをもてあそんでいる。

中国、日本、インド、ロシア、そして、
The European Union ……..is looking more fractious and riven by incipient 
nationalism than at any point since its formation.


fractious」―怒りっぽい、面倒を起こす(トラブルメーカーになりつつあるかな)
riven by incipient nationalism」-ナショナリズムの萌芽にかき乱されている

ということで、同じようなことが起きるのを防ぐための注意ということでEconomist誌は
2点挙げています(「Two precautions would help prevent any of these flashpoints 
sparking a conflagration.

まず、
脅威を抑制するための体制ということで、特に北朝鮮あるいは中国周辺海域での衝突を
避けるためのルール作りを提唱しています。

2つ目は、
アメリカがもっと積極的な外交を展開すべきであると。オバマ政権は、中東で引き気味
であり、また、中国やインドを含めた新興国をグローバル体制に組み込むための努力を
払っていないとして、

This betrays both a lack of ambition and an ignorance of history
野心の欠如と歴史の軽視をあからさまにしている)

結論として、
現在の脅威が1914年と同じような状況に向かう可能性は非常に低く、

Madness ….. usually gives ground to rational self-interest

と判断するが、

But when it triumphs, it leads to carnage, so to assume that reason will 
prevail is to be culpably complacent. That is the lesson of a century ago.

(しかし、狂気が勝る時、それは殺戮につながる。理性が優位を占めると決め込むことは
罪深き自己満足である。それが1世紀前の教訓である)

ということだそうです。

2013年12月24日火曜日

「英語にハマりませんか?」No.83

あっというまに年末です。

28日からちょっと海外に行ってきますので、今回のブログが今年最終となるか、もう1
といった予定です。

今回は、All the President’s Menです。

ニクソン陣営による選挙妨害活動について詳細を報告する原稿ができあがります。

最初の2-3パラグラフについて、ポスト紙内部では

sweeping statements about massive political espionage and sabotage directed 
by the White House as part of a basic re-election strategy were essentially 
interpretive and risky

(つまり、ホワイトハウスが指揮した大規模な諜報・妨害活動について包括的に(sweeping
説明してあるが、さまざまな解釈の余地があり(interpretative)、リスクを伴う)、

と評価する一方で、このパラグラフについて、

ホワイトハウスはスパイや妨害ではなく、intelligence gathering」や「prank」(悪ふざけ)
という言葉で説明しようとするかもしれないが、その後に出てくる「Canuck Letter」や
Segrettiの行った活動を読む限り、そういう誤魔化しは効かないだろうと判断し、
ゴーサインが出ます。

こうしてできた記事の見出しは

FBI Finds Nixon Aides/Sabotaged Democrats

で、午後7時に配信されると、ニューヨークタイムズでは素早く反応し、Segrettiから
害活動に加わらないかと誘われた3人の弁護士(名前覚えていますか?Shipleyその他
に取材し、事実を確認して、ポスト紙の記事の要約と共に深夜版に載せます。

これを受けて、翌朝のホワイトハウスでは、

ジーグラー報道官は、記者達から29回もポストの記事についての質問を受け、そのたびに、この
問題についてはニクソン再生委員会がappropriately responded」(何かよく分かりませんね)
しており、ホワイトハウスとしては付け加えることは特に無いという答弁を繰り返します。

一方、ポスト紙では、編集主幹のBradleeWoodwardBernsteinを食事に誘います。
Bernstein不在のため食事に行かなかった。

高級フランス料理店で、Bradleeは、

You’d better bring me up to date because …. Our cocks are on the chopping block 
now and I just want to know a little more about this

と切り出します。

(そんなこと言っても、あんたが承認して記事にしたのでしょと突っ込みたくなりますが。
これから対決が始まるぞという宣言でしょうね。たとえはちょっと品が悪いですが)

Bradleeとしては、編集幹部から報告は聞いているが、直接記者から情報源等について細かい
情報を聞いて、きちんと裏付けをとりながら記事を書いていることを再確認したかったようです。

その結果、

The line was drawn at a point which satisfied Bradlee’s reportorial instincts and 
responsibilities as an editor, as well as Bernstein’s and Woodward’s promises 
of anonymity to their sources
(こういう意思確認は大事ですね)

さて、第2弾として、Woodward達は、ホワイトハウスとSegrettiのつながり、そして、

dirty tricks that plagued the Muskie campaign

について書こうと考えていますが、なかなかまとまらない。

翌日の記事は、ホワイトハウスの反応(というか無反応)と、ニクソン大統領自らの回答を
求めるマスキー上院議員についての2本が予定されています。

マスキー議員は、司法省以外の人員で行う公式調査を要求しています。

しかしながら、どちらの記事もインパクトが弱い(Neither story generated much enthusiasm)。

そして、編集幹部は、

the lack of a strong follow-up could be interpreted as pulling back on the part of 
the Post」(確かにね)と懸念し、Woodwardに対して「keep trolling for a story」と指示する。

翌日の記事について話し合った日の夕方、

McGovern候補の選挙陣営の幹部Mankiewicz(発音しにくい名前!)(「crafty professional
だそうです。悪賢いという意味もありますが、「選挙活動に長けたベテラン」ということでしょう)
から電話が入り、自分たちの陣営も様々な妨害活動を受けたと告発してきます

(「acts of alleged sabotage …… so well engineered that they must have come 
from the Republicans」(共和党のやりそうな、周到に準備された妨害))。

McGovern陣営の幹部を名乗るという悪質のものから、「harassing phone calls」まで多岐に
わたったとのことです(中で面白いのは、Mankiewiczを装って(impersonated)、CBS
一世を風靡したアンカーマンのウォーター・クロンカイトに電話し、McGovern側に有利な報道を
してほしいと持ちかけたというものです

クロンカイトは、後で、the guy was definitely not just a crank.  It was a very good 
imitation.とコメントしています(2人は旧知の間柄ということですね)

crank」-奇人/変人とありますが、単なるいたずらではないということでしょう。

ポスト紙の担当編集者はこの告発を記事にしようと言いますが、Woodwardは、確たる証拠が
無いと反対します。

He was concerned that readers might justifiably conclude that the McGovern campaign 
was jumping onto a sabotage bandwagon.

(読者は、McGovern陣営は、妨害活動の記事が出たことで自分達もその波に乗って注目を
集めようとしていると考えてしまうかもしれない)。

それでも押し切られ、Woodwardは記事を書きます(但し、Mankiewiczからは確たる証拠を
提供されていないと注記します)。

見出しは「Democrats Step Up Sabotage Charges」です。

一方、Bernsteinは、友人の葬儀のために1日休んでいたが、戻ってくると、上記のような進展に
非常にくやしがる(doubly chagrined)。

彼としては、マスキー候補に対する妨害工作の最終確認がもうすぐできる状態にあったからです。

マスキー陣営の職員11人に電話取材をして、さまざまな妨害活動を受けていたという証言を
得ていたのです。

their campaigns have been repeatedly victimized by unexplained accidents that 
seemed as if they could only be the results of an organized effort

(なかなか面白い表現です。「unexplained accidents」-偶然とは思えない出来事、
という訳でどうでしょう)

書類の紛失から始まって、マスキー陣営を騙った支持者への迷惑電話、そして、
Canuck Letterまで。

同時に、マスキー陣営関係者の多くは、自分達が候補者の動揺(vacillation on the issues)、
そして、不手際(ineptitude)(インタビューで泣いたこと?)によって自滅した(self-destructed
と考えている。

なかなか厳しいものですね。候補者として公開の場で毅然とした振る舞いができなかったことに
スタッフは失望したのでしょうね。

一方、Woodwardは、ポストの他の記者から、マスキー候補が選挙期間中に自分の家族が
尾行されているとして法的なアドバイスを求めていたという情報を得ます。

それを受けて、Bernsteinはマスキー議員に1時間ほどインタビューします。

マスキー議員は問わず語りに(with no prodding)、自分としては

systematic campaign of sabotage

の背後にはニクソン陣営がいると疑っていたと話します。

(「…. Because that’s nature of this administration; they have no sensitivity to privacy 
or decency in politics....」)

マスキー議員は、自分の陣営が受けた妨害活動について語り、自分自身も尾行されていた
と言ったのに対し、家族も尾行されていたのかとBernsteinが聞くと、

Whatever happened with members of my family is private

と歯切れの悪い答。

そこで、誰かがマスキー候補の子供についてネガティブな情報(「like whether they smoked 
dope」)を探っていたのかと突っ込むと、「I’m just not going to talk about it」と素っ気ない。

なるほど、図星ということですか。

ということで、今回はこれまで。

2013年12月19日木曜日

「英語にハマりませんか?」No.82

さあ、前回予告しました、エコノミスト誌の巻頭記事「BlackRock」です。

世界最大と言われているが、一般にはあまり知られていないという、不思議な
Investment management company」(資産運用会社)についてのレポートで、
どうして巻頭に取り上げたのかを含めて興味をそそられ、取り上げてみました。

記事の見出しは、

The rise of BlackRock
In 25 years, BlackRock has become the world’s biggest investor. 
Is its dominance a problem?

書き出しは、

ASK conspiracy theorists who they think really runs the world, and they will 
probably point to global banks, such as Citigroup, Bank of America and 
JPMorgan Chase…….

ということで著名企業の名前がずらりと並びます。

conspiracy theorist」-陰謀論(世の中は全て陰謀で動いている)の信奉者
(単に陰謀論者でもよいか)

その上で、いずれも違うよということで、

One firm unlikely to feature on their list is BlackRock, an investment manager 
whose name rings few bells outside financial circles.  Yet it is the single
 biggest shareholder in all the companies listed above......

rings few bells」-いいですね。なかなか文学的(?)な響きがあります。
ついでに言えば、エコノミスト誌の最大株主であるPearsonの筆頭株主だそうです。

社債、国債、ヘッジファンドとあらゆる分野に投資をしており、

It is easily the biggest investor in the world, with $4.1 trillion of directly 
controlled assets and another 11 trillion it oversees through its trading 
platform, Aladdin…..

4兆ドル超の資産を管理し、Aladdinという、BlackRockが独自開発した先進的な
リスク分析及びトレーディング·ステムを駆使した審査運用サービスでは11兆ドル超を
管理しているそうです。

1988年の創業から25年で世界最大となった成功の秘訣は、第一に

“passive” investment products」(パッシブ運用―市場平均と同程度の運用成績
目標とした運用方式-による投資商品)を主に提供したことにある。こうした商品は、

cheap alternatives to traditional mutual funds, which often do more to enrich 
money managers tan clients. ……….

なるほど、手数料ばかり取られるファンドよりもコストが安いので幅広い層の投資家を
集めたというわけです(分かるな!)。

もうひとつの成功要因は、

its management of risk in its actively managed portfolio.  Early on, for instance, 
it was a leader in mortgage-backed securities.  But because it analyzed their 
riskiness zip code by zip code, it not only avoided a bail-out in the chaos that 
followed the collapse of Lehman, but also advised the American government and 
others on how to keep the financial system ticking in the darkest days of 2008…..

積極運用でのリスク管理の巧みさだそうです。最初は抵当証券への投資で業界一だったが、
その後リスクを細かく(zip code by zip code)分析した結果、リーマンショックの影響を回避
できたばかりか、米国政府等に金融システム救済についてのアドバイスもしたということです。

エコノミスト誌は、国のバックアップでぬくぬくとしている銀行に比べると、顧客を大事にし、
緻密な仕事を行っているBRの成功は当然であると高く評価しています。

Compared with the many banks which are flourishing only thanks to state 
largesse, BR’s success – based on providing value to customers and paying 
attention to detail – is well-deserved.

その巨大さから、アメリカの規制機関は、BRを「systematically importantという名目で
規制の対象とすることを考えているが、エコノミスト誌は反対します。

If the regulator’s concern is to avoid a repeat of the last crisis, they are barking 
up the wrong tree.」お門違いという指摘です。

It has control over investments it holds on behalf of others ……… it neither 
keeps the profits nor suffers the losses on them.....

銀行と異なり、BRは単に他人の資金の管理者であり、損失も利益もBRを素通りするため、
自身は金融危機の影響を受けないという論拠です。

そうは言っても、規制機関としては、将来のシステミック・リスクの原因になるかもしれない
存在として関心を持っている。つまり、資産の所有者ではないが、膨大な資産の売買の
決断について大きな影響力を持っている点を気にしています。

The $15 trillion of assets managed on its Aladdin platform amount to 
around 7% of all the shares, bonds and loans in the world. As a result, 
those who oversee many of the world’s biggest pools of money are looking 
at the financial world, at least in part, through a lens crafted by BlackRock.

なるほど、BlackRockというレンズを通して見ているという表現です。

ということで、最後の項目「Aladdin’s genius」です(アラジンの魔法のランプに
かけているのかな)。

That is a tribute to BlackRock’s elaborate risk-management models, but 
it is also discomfiting. A principle of healthy markets is that a cacophony 
of diverse actors come to different conclusions on the price of things, 
based on their own idiosyncratic analyses.......」

こうした状況は、BlackRockの緻密なリスク管理モデルを賞賛するものであるが、
一方でいささかの当惑を禁じ得ないとしています。(なぜなら)健全な市場原理とは、
多様な参加者が混在する中で独自の分析に基づいて価格について異なる結論に
至ることを意味するとして、

Though Aladdin advises clients on investment decisions rather than 
making them, it inevitably frames how they think of market risk.

と指摘します。

結論的には、リーマンショックの原因のひとつに多くの投資家が格付け機関を信
し過ぎたことにあり、BlackRockの分析は、その成功からも分かるようにMoody’s
その他が提供した「clunker(役立たずの情報)」よりはましであるとする一方で、
1社の分析情報に多くの投資家が依存するのもどうかという疑問も呈しています。

但し、市場全体への影響としては、BlackRockの分析結果に従った売買の決断を
する投資家が増えれば、同時にその逆張りをする投資家も増えるという意味で
self-limiting」(自主規制)が働いているという評価。

今後BRの分析に依存する投資家がさらに増えると、それが的中した場合の上がりは
少なくなり、逆に裏目に出た場合の損失は大きくなる市場条件になるとしながらも、
今のところBRのリスク管理は評価すべきであるとして、

If its peers in the financial world had taken the same approach in the 
run-up to 2008, much of the chaos of the past five years would have been 
averted.

と結んでいます。

まあ、どんな優れた投資法でもいずれは時代遅れになる、
それを分かった上で利用しろということですかね。