2013年3月24日日曜日

「英語にハマりませんか?」No.23

さあ、ようやく(というか急に)春になり、桜も咲きました。

心も多少ウキウキし、新しい本との出会いの季節(というか、私の場合は、以前に買って
棚ざらしになっている本を手に取ることも多いのですが)となってきました。

読書歴の延長として最近読んでいる本についてまとめてみようかと思います。

例によってちょっとした感想を書きながら、目に留まった(将来使えそうな)単語や表現を
取り上げていきます。

まず最近読んでいる本は以下の3冊です

1.「Nickeled and Dimed
2.「Government in America
3.「Reckoning

Nickeled and Dimed」は、アメリカのWorking Poorについての本で、著者が実際に低賃金で
働いてみるという潜入ルポです。なかなかカラフルな表現が出てきます。

Government in America」は、80年代のアメリカ政治の教科書です。向こうで履修するコース
Political Science 101」(日本人留学生の間では「ポリサイ」と略称されていたと記憶しています)
の教科書で、ニューヨークのダウンタウンにある古本屋で買いました。

ハードカバーで黄色いマーカーがそこここに「塗られている(本当向こうの教科書はこういう
感じです)」典型的なsecond hand bookです。似たような本はいくらでもあるでしょうが、複雑な
アメリカの政治が分かりやすく解説されているだけでなく、日本の教科書にはあまり見られない、
風刺やひねりの聞いた表現やanecdoteが豊富なところも気に入っています。

The Reckoning」は最近読みだした本です。これもかなり古い本で80年代後半の日米自動車
戦争という近代産業史のジャンルになりますかね。著者は、David Halberstam(代表作に
The Best and the Brightest」)です。

随分前に買っていた本ですが、ひょんなことから読み始めたら、面白い!今は、フォードによる
アメリカ自動車産業の勃興期を読んでいますが、こういう黄金時代があるとその後はどうしても
慢心するというか、out of touch」になるのですかね?

日本の家電メーカーも同じように無我夢中で努力してそれが市場の要求に「ぴったんこ」
だった時があったわけでしょ(一方で、アメリカはシェールガスという新しいエネルギー源が
出てきているのがしぶといですが)。ということで、慣れない分析はこれぐらいにして、この本
からも面白い表現やエピソードを順次紹介します。

なお、最近まで読んでいた「Busting Vegas」という、MITの学生が必勝法を編み出してカジノで
大儲けする本もなかなか面白かったですね。

2013年3月18日月曜日

「英語にハマりませんか?」No.22

さあ、ちょっとホットな話題を取り上げましょうか。

といっても、Conclaveじゃないですよ。
ニューヨークのSugar ban騒動です!どうもこういう話題の方が突っ込みやすくて好きです。

どうということもない小ネタですが、アメリカを理解する上では重要な意味があると思います。

ニュース自体はsugary drinksの大きさを規制するというたわいもない話なんですが
反対する人が裁判に訴えて、裁判所がその是非を判断するという展開は、アメリカ独特の
裁判所を通じた政策の実施や変更(この場合は撤回)を象徴する出来事だからです。
アメリカの裁判所は「Policymakerの役割も果たしているということですね。

一方で、この問題にからんだ報道や関連する発言でどのような表現や単語が使われているか
という点にも興味をそそられます。

どのような単語を選ぶかが一般の人の受け止め方に影響が与えるというのがアメリカの文化
であるという意味でも、また、自分が英語で発信する場合に色々な角度や表現が可能である
ということを理解する上でも重要です。

たとえば、Wall Street Journal電子版の見出しは「Judge Cans Soda Ban」といかにもおちゃらけ
ですが、内容的には、レストランでの禁煙やトランス脂肪酸を含む食品の禁止といった健康志向
の条例を出してきたブルームバーグ市長にとって意外な敗北だったと結構真面目に分析して
います。トランス脂肪酸の禁止がOKなら、Sugary beveragesize restrictionOKなはずという
有識者の意見も紹介しています。

一方で、反対者の主張を認めた判事は、
the regulations would not only violate the separation of powers doctrine, it would
eviscerate it. Such an evisceration has the potential to be more troubling than sugar
sweetened beverages.

(つまり、「ニューヨーク市の保健局が、市議会の議決を経ずに今回の規則を定めたことは
三権分立の原則に反する。反するどころか、骨抜きにするものであり、砂糖入りの飲料よりも
害が大きいと考えられる」というロジックですな。アメリカ人が言いそうなことですが、判決と
してはなかなかオシャレです。)

そして、市長は、判決に反論する一環として、自主的に大きなソーダの販売を止めている
市内のバーに行って次のように発言しています。

Over the past nine months, we started a national conversation on the linkage between
sugary drinks and obesity, and despite yesterdays temporary setback, I dont think there
is any doubt the momentum is moving in our direction. In weeks and months ahead, we will
 continue to tackle the obesity epidemic and more and more people who.. (後略)

「われわれはこの問題については、9か月にわたって全米の問題として議論してきており
(決して早急に判断したわけではない)、(今回の敗訴は)一時的な停滞にしかすぎず、流れは
われわれの思う方向に動いている」という理屈です。

さらに「obesity epidemic」という言葉を使うことで、公共の利益に叶う規制であると示唆して
いるのがうまいですね。

なお、言うまでもなく、Fatと言う言葉は「politically incorrect」です(not to mention fatso)

もうちょっと分析したいところですが、甘味は苦手で胸にもたれてきそうなのでこの辺にして
おきます。

2013年3月13日水曜日

「英語にハマりませんか?」No.21

それでは、読書歴の後半を。

人それぞれ、自分のお気に入りの作家との出会いがあるのでしょうが、私の英語での
読書の楽しさを教えてくれたのは、何と言ってもArthur Haileyですね。
もともとイギリス人で、のちにカナダ人となりました。第二次世界大戦中は空軍のパイロット。
その知識を活かして書いたのが「Flying into danger」で、テレビドラマになりました。
次があの(といっても今や知らない人も多いか)「Airport」ですね。

豪華スターの共演で映画にもなりました。というか、前回の読書歴で書きましたように、
最初に映画を見たがあまり分からず、原作を読むことになったパターンですね。

以前紹介した2冊は300ページぐらいだったのですが、これは500ページ以上の大作。
夏休み、旅行から帰ってきて、サマーセッションの授業をとろうと思ったけど面白いのが
なかったので取り組みました。

3冊目でコツは覚えていたので、スムースな入りでした。

ただ、「master storyteller」と称されるテクニックを駆使し、色々な人物を少しずつ登場させ、
だんだんからんでくるという複雑な展開の小説なので、最初のうちは、2-3章進むと突然
新しい人とエピソードが出てきて話についていくのが大変でしたが、何せ話が面白いので
引き込まれ、ほぼ毎日かなりの時間読んで1月ぐらいで読了しました。

語り口の面白さに加えて、ボキャブラリーの豊かさ、そして、出てくる会話の巧みさ(実際に
話されているような省略や間接的な表現が会話の勉強になりました。

実際、この本を読んでから、人との会話やテレビを見ても行間を含めた展開がよく分かる
ようになってきました)にすっかり魅せられました。

この時読んだのは、とりあえず「Airport」と「Flying into danger」だけでしたが、その後、
日本に戻り、中近東に出稼ぎに行った時に「Hotel」、「Final Diagnosis」、「Overload」、
Wheels、さらに、「Evening News」、「Moneychangers」、「In High Places」。

それぞれが特定業界の内幕もの(山崎豊子さん等と同じスタイルです)で、そういう点でも
読んでいて飽きません。今でも時々好きな箇所を読み返すことがあります。
ということで、回顧録はこれぐらいにして、次回からは、最近読んだ/現在読んでいる本の中
から、私の気に入った表現を順次紹介していきたいと思います。

2013年3月9日土曜日

「英語にハマりませんか?」No.20

読書歴の続きと行きたいところですが、
ちょっと気をもたせて、「Economist」の記事を取り上げます。

Economist」は、現在Web版にsubscribeています。
以前はプリント版を時々買っていたのですが、読み残してしまうことが多いので、
読みたいときに読みたいだけ、過去の記事もすぐ検索できるという便利さもあって
Web版にしています。iPadでも読めますし。

この雑誌は、専門家の方々が引用することが多く、世界的な視野で多彩な記事が
書かれているのが魅力ですね。

それから、かなり賛否をはっきりした主張をするところも気にいっています(特に最近の
ユーロ危機では厳しい意見が目立ちます)。使っている単語や表現も凝ったものが多く
勉強になります。

さて、
先週号で目を引いたのが、巻頭のイタリアの記事です。
Italys election send in the clowns」という皮肉たっぷりのタイトルです。

この中で日本を例に出してイタリアとユーロの今後について警告しているのですが、
その扱われ方が「はてな?」という感じがしたので触れてみます。
一方で、同じ記事の中で使われている単語や表現には翻訳上参考になるものがあるので
ご紹介しようと思います。
まず、日本がらみの表現ですが、
今回の選挙で本物のコメディアン、そして、「political buffoon」と化したベルルスコーニが
それぞれ率いる2つの政党に大量の票が投じられたことについて、Economistは、
イタリア国民は成長の止まった経済を改善するための改革を拒否したことになり、このままで
行くと
it leads to the economic paralysis and political decline that Japan has endured for the past
20 years」と警告しています。

この表現はまあしょうがないとしても(paralysisには抵抗感ありますが)、それに続く
Change course or be like Japan」(改心しないと、日本みたいになるぞ)というサブタイトルは
ちょっと大げさでない?

イタリアよりはずーっとましだと思いますけど。

しかも、このタイトルの後日本については一切語られていません。わざわざ日本を引き合いに
出した意味が無いのでは?

イタリアとユーロのこれからの暗い見通しをひとしきり嘆いた後に、「Too big to fail or bail
という次のサブタイトルの最後の部分で

The euro survives but at immense economic cost. The euro zone becomes Japan.

と結んでおります。へーとしか言いようがない。

と、文句を言ってみたものの、それ以上あまり深入りする気も起きず、代わりに面白い表現に
興味をひかれてしまうのは翻訳者の性(さが)というやつですかね(分析が浅くて
すみません)。

まず、2段目のパラグラフで、中道左派による連合政権が難しくなった金融市場の反応として、
financial markets across Europe swooned on the news」という表現を使っております。

[大きなショックを受け]「狼狽した」ということなんでしょうが、ちょっと使ってみたく
なりますね。たまに使うと「おや、できるな!」と思われるかな(?)。

さらには、2つ似たようなフレーズが目を引きます。

ひとつは、
the danger is less of break-up than of stagnation.」(第3パラグラフの初め)
という表現です。なかなかトリッキーです。

今回の選挙によって生じる)危険は、崩壊というよりも、停滞にある(言葉を入れ替えれば、
「崩壊の危機ではないが、停滞の危険をもたらした。」という感じですかね。
これは日本語から翻訳する場合にはちょっと思いつかない文章構造です。
その2パラグラフ後にも似た表現として、
the worry is of no progress with the reforms that are desperately needed to restore
vitality to an asphyxiated economy.
というのがあります。

同じような単語としては、「fear」とか、「concernも使えるでしょうね。

日本語の経済見通しその他の表現では、「.....の懸念がある」というのはよく使われる
表現ですから、そういう時には、次回からこのフレーズを試してみたいと思います。

また、「asphyxiatedもちょっと使ってみたくなる表現です。
似たような形容詞としては「anemic」なんてのもあります(Businessweekで時々見ました)。

ということで色々考えたら疲れてきたので、今回はこれぐらいで。

2013年3月3日日曜日

「英語にハマりませんか?」No.19

今回は英語の読書遍歴について少し語りたいと思います。

私が初めて(とにもかくにも)読了した英語の本は、「All the President's Men」です。
1976年に出版され、映画化もされました。

というか、この本を読むきっかけとなったのがロバート・レッドフォードとダスティン
ホフマン主演の映画を観たことです。

当時、カナダに留学して半年くらい経過し、生活には慣れたけど、英語はまだそれほど
うまくなっていない、1976年の春でした。休みには映画でもいうことで
All the President's Men」を観たのですが、何言っているのかさっぱり分からない!!!

半年も英語圏で暮らしたのにとがっかりしたのですが、分からないままというのも不愉快。

ふと思いついたのが原作を読むこと。もともと読書好きなので、本をゆっくり読めば
分かるだろうという思惑でした。

ところがどっこい、分からない単語だらけ!言い回しも難しい(ワシントンポストの記者
2名の共著)。

おまけに、何としたことか、私は英和/和英辞典を持っていなかったのです!
(そんなものに頼ってはいかんという「決心」で持っていかなかったと記憶しています)
もちろん電子辞書なんてものは無い。

読み始めたものの(春休みで暇はあったので)、辞書を引いている時間の方が長い。
/英辞典で、ある単語を引くと、その意味として出ている単語の意味が分からず、
さらに引くという事態が頻発。

それでも、なんとか10ページぐらい読みましたかね。さすがに疲れました。そこで考えた
わけです。

辞書を引くのは、その意味が分からないと話の展開が理解できないキーワードだけに
しよう。後は何とか意味を想像できる言葉も多いからほっておこう。

そう思って読み始めると、辞書で引かないと分からない単語は意外に少ないということに
気づきました。辞書を引くのをちょっと思いとどまって前後の文章から考えていくと、
なんとなく意味が分かり、話の筋も理解(というよりも想像)できるようになりました。

さらには、何回も登場してくる単語も結構あって自然に覚えてくる。と良い感じに回り始め、
300ページちょいのペーパーバッグをなんとか読み切りました(2か月くらいかかりました
かね。意味が分かっていない箇所も多かったですが)。

これで少し自信と意欲が出て、次も同じ作戦でということで、「One Flew Over the Cuckoo's
Nest」という、当時評判だったジャック・ニコルソン主演の映画を観て(分かったような
分からないような感じで)、次に原作を読みました。

前回のノンフィクションと違って、凝った表現や辞書ではよく意味が分からないスラングも
ありでしたが、まあまあ話に入り込めたという感じが新しい体験でした。

そして、3冊目に出会ったアーサー・ヘイリーで本格的に英語での読書の楽しさに
目覚めたのです!(ちょいおおげさか)

ということで今回はここまで(気を持たせるというよりも、長くなりそうなので休憩します)。