読書歴の続きと行きたいところですが、
ちょっと気をもたせて、「Economist」の記事を取り上げます。
「Economist」は、現在Web版にsubscribeしています。
以前はプリント版を時々買っていたのですが、読み残してしまうことが多いので、
読みたいときに読みたいだけ、過去の記事もすぐ検索できるという便利さもあって
Web版にしています。iPadでも読めますし。
この雑誌は、専門家の方々が引用することが多く、世界的な視野で多彩な記事が
書かれているのが魅力ですね。
それから、かなり賛否をはっきりした主張をするところも気にいっています(特に最近の
ユーロ危機では厳しい意見が目立ちます)。使っている単語や表現も凝ったものが多く
勉強になります。
さて、
先週号で目を引いたのが、巻頭のイタリアの記事です。
「Italy’s election send in the clowns」という皮肉たっぷりのタイトルです。
この中で日本を例に出してイタリアとユーロの今後について警告しているのですが、
その扱われ方が「はてな?」という感じがしたので触れてみます。
一方で、同じ記事の中で使われている単語や表現には翻訳上参考になるものがあるので
ご紹介しようと思います。
まず、日本がらみの表現ですが、
今回の選挙で本物のコメディアン、そして、「political buffoon」と化したベルルスコーニが
それぞれ率いる2つの政党に大量の票が投じられたことについて、Economist誌は、
イタリア国民は成長の止まった経済を改善するための改革を拒否したことになり、このままで
行くと
「it leads to the economic paralysis and political decline that Japan has endured for the past
20 years」と警告しています。
この表現はまあしょうがないとしても(paralysisには抵抗感ありますが)、それに続く
「Change course or be like Japan」(改心しないと、日本みたいになるぞ)というサブタイトルは
ちょっと大げさでない?
イタリアよりはずーっとましだと思いますけど。
しかも、このタイトルの後日本については一切語られていません。わざわざ日本を引き合いに
出した意味が無いのでは?
イタリアとユーロのこれからの暗い見通しをひとしきり嘆いた後に、「Too big to fail or bail」
という次のサブタイトルの最後の部分で
「The euro survives but at immense economic cost. The euro zone becomes Japan.」
と結んでおります。へーとしか言いようがない。
と、文句を言ってみたものの、それ以上あまり深入りする気も起きず、代わりに面白い表現に
興味をひかれてしまうのは翻訳者の性(さが)というやつですかね(分析が浅くて
すみません)。
まず、2段目のパラグラフで、中道左派による連合政権が難しくなった金融市場の反応として、
「financial markets across Europe swooned on the news」という表現を使っております。
[大きなショックを受けた]「狼狽した」ということなんでしょうが、ちょっと使ってみたく
なりますね。たまに使うと「おや、できるな!」と思われるかな(?)。
さらには、2つ似たようなフレーズが目を引きます。
ひとつは、
「the danger is less of break-up than of stagnation.」(第3パラグラフの初め)
という表現です。なかなかトリッキーです。
(今回の選挙によって生じる)危険は、崩壊というよりも、停滞にある(言葉を入れ替えれば、
「崩壊の危機ではないが、停滞の危険をもたらした。」という感じですかね。
これは日本語から翻訳する場合にはちょっと思いつかない文章構造です。
その2パラグラフ後にも似た表現として、
「the worry is of no progress with the reforms that are desperately needed to restore
vitality to an asphyxiated economy.」
というのがあります。
同じような単語としては、「fear」とか、「concern」も使えるでしょうね。
日本語の経済見通しその他の表現では、「.....の懸念がある」というのはよく使われる
表現ですから、そういう時には、次回からこのフレーズを試してみたいと思います。
また、「asphyxiated」もちょっと使ってみたくなる表現です。
似たような形容詞としては「anemic」なんてのもあります(Businessweekで時々見ました)。
ということで色々考えたら疲れてきたので、今回はこれぐらいで。