Economist 10/19日号です。
久々に最新の出来事ではない題目での巻頭記事です。
「Problems with scientific research
How science goes wrong
Scientific research has changed the world. Now it needs to change itself」
科学的研究に問題が発生しているというのです。
サブタイトルで、「科学的研究は世界を変えてきたが、 自らを変える(改善する)時が
来ている」 という警鐘を鳴らす内容になっています。
かいつまんで言えば、
きており、 改善が必要だということですが、 出てくるフレーズがなかなか凝っている
ので、私の苦手とする(? )掘り下げた分析を試みてみました。
冒頭は静かに始まります。
「A simple idea underpins science: “trust, but verify,” Results should always
be subject to challenge from experiment. That simple but powerful idea has
generated a vast body of knowledge ….. modern science has changed the
world beyond recognition, and overwhelmingly for the better.」
日本語的には、「科学の基礎となっているのは、信ぜよ、 されど確認せよ」という
簡単明瞭な考え方である」となります。
ようです。 ソ連の提供する核保有の情報について信頼はするが、 検証は怠るなという
意味です。
「powerful」というのをどう訳すかですが、 確固たるという感じですね。
「beyond recognition」-劇的に変えたということでしょう。
「overwhelmingly for the better」-なかなか浮かんでこない言い方です。 圧倒的に
良い方向に変えたと。
ということで、
最初のパラグラフで科学の業績を称えておいてすぐ( というか、これだけ称えたという
ことは何かある)、 問題提起に入ります。
「But success can breed complacency. Modern scientists are doing too much
trusting and not enough verifying …….」
しかしながら、成功は自己満足(傲慢さ)を生む。 現代の科学者は、信頼しすぎで、
十分な検証をしていないという、 リズムのよい表現で、単刀直入な指摘です。
どういう問題かをちょっと面白いスタイルのフレーズで表現してい ます。
「Too many of the findings that fill the academic ether are the result of shoddy
experiments or poor analysis.」
学術界(academic ether)に溢れる発見の多くが、いいかげんな(shoddy )実験や
不適切な分析の結果から生まれている。
ここまで言い切った以上は実例をということで、
「A rule of thumb among biotechnology venture-capitalists is that half of
published research cannot be replicated.」
バイオテクのベンチャーキャピタリストの経験則では、 発表されている研究結果の
半分は繰り返す(再現) ことができない。
しかも、
「Even that may be optimistic.」
Economist得意の短いフレーズです。
ということで、色々な人が明らかにしている、 多くの主要な論文の結果は確認や再現が
できないという例が続きま す。
「A leading computer scientist frets that three-quarters of papers in his
subfield are bunk.」
「fret」-いらだっている(「怒っている/文句を言っている 」の方が自然)
「bunk」-でたらめ
そして、 間違った研究によって人の命が危険にさらされるリスクはそれほど 高くないと
しても、資源の無駄使い(「it squanders money and the efforts of some of the
world’s best minds」)を招いていると指摘しています。
その結果、 必要とされる部分での科学的進歩が阻害される「機会費用」 は大きく、
また、さらに増加していくことを懸念しています。
その理由としては、 学者が増えて競争が激しくなった点を第一に挙げています。
品質管理を重視する分別が失われている( 「lost their taste for self-policing and
quality control」)。
アメリカで教授職を得ると年収は135, 000ドル(裁判所の判事より高いそうです)で、
第二の理由は、出世至上主義(careerism)で、 そのために研究成果の誇張や
いいとこ取り(cherry- picking)が助長されているという指摘です。
findings have the greatest chance of making it onto the page.」)。
ということで、
研究者のうち3人に1人は、 感覚に基づいて都合の悪いデータを取り除いて論文を
よく見せると いう好ましくない行為を行っている例を聞いたことがあるそうです。
by …. Excluding inconvenient data from results “based on a gut feeling.”」)。
一方で、
(「know ing what is false is as important to science as knowing what is true.」)。
これは良い言葉です。
それじゃ、 こうした現状を改善するにはどうしたらよいかという提案に移りま す。
「If it’s broke, fix it」というサブタイトルです。
なるほどね。
対策のひとつとしては、遺伝子工学のように、 研究成果の評価基準を厳しくすべきである。
ようにすることが望 ましいと。
さらに、
「Journals should allocate space for “uninteresting” work, and grant–givers
should set aside money to pay for it.」
ということで、派手さは無いけど、 内容重視で論文を選びなさいと言うことですな。
また、「peer review」(同僚による評価)も厳しくすべきであると。
結論としては、
「Science still commands enormous—if sometimes bemused—respect. But its
privileged status is founded on the capacity to be right most of the time and
to correct its mistakes when it gets things wrong. And it is not as if the
universe is short of genuine mysteries to keep generations of scientists hard
at work. The false trails laid down by shoddy research are an unforgivable
barrier to understanding.」
まあ、科学も、 その昔は全く認められない時代があったわけですが、現在は、 原子力の
問題などあるものの、まだ信頼されていますから。
2つ目の文書が面白いですね。特に「capacity」 という言葉の使い方が。
次の文章も、「not as if」ということで、「 この世界には何代にもわたって科学者達を
真剣に取り組ませるよう な本当の謎が不足している訳でもない」という感じになりますね。
ということで、今回は非常に疲れました。読むのも疲れますよ。