2013年10月30日水曜日

「英語にハマりませんか?」No.75

Economist 10/19日号です。

久々に最新の出来事ではない題目での巻頭記事です。

Problems with scientific research
How science goes wrong
Scientific research has changed the world. Now it needs to change itself

科学的研究に問題が発生しているというのです。
科学はどのように誤っているのかという問いかけです。

サブタイトルで、「科学的研究は世界を変えてきたが、自らを変える(改善する)時が
来ている」という警鐘を鳴らす内容になっています。

かいつまんで言えば、
最近の研究成果は十分な検証もなされておらず、派手さを追い求めるものが増えて
きており、改善が必要だということですが、出てくるフレーズがなかなか凝っている
ので、私の苦手とする(?)掘り下げた分析を試みてみました。

冒頭は静かに始まります。

A simple idea underpins science: “trust, but verify,”  Results should always 
be subject to challenge from experiment.  That simple but powerful idea has 
generated a vast body of knowledge ….. modern science has changed the 
world beyond recognition, and overwhelmingly for the better.

日本語的には、「科学の基礎となっているのは、信ぜよ、されど確認せよ」という
簡単明瞭な考え方である」となります。

この「trust, but verify」というのは、冷戦時代にアメリカの大統領が使ったフレーズの
ようです。ソ連の提供する核保有の情報について信頼はするが、検証は怠るなという
意味です。

powerful」というのをどう訳すかですが、確固たるという感じですね。
beyond recognition」-劇的に変えたということでしょう。
overwhelmingly for the better」-なかなか浮かんでこない言い方です。圧倒的に
良い方向に変えたと。

ということで、
最初のパラグラフで科学の業績を称えておいてすぐ(というか、これだけ称えたという
ことは何かある)、問題提起に入ります。

But success can breed complacency.  Modern scientists are doing too much 
trusting and not enough verifying …….

しかしながら、成功は自己満足(傲慢さ)を生む。現代の科学者は、信頼しすぎで、
十分な検証をしていないという、リズムのよい表現で、単刀直入な指摘です。

どういう問題かをちょっと面白いスタイルのフレーズで表現しています。

Too many of the findings that fill the academic ether are the result of shoddy 
experiments or poor analysis.

学術界(academic ether)に溢れる発見の多くが、いいかげんな(shoddy)実験や
不適切な分析の結果から生まれている。

ここまで言い切った以上は実例をということで、

A rule of thumb among biotechnology venture-capitalists is that half of 
published research cannot be replicated.

バイオテクのベンチャーキャピタリストの経験則では、発表されている研究結果の
半分は繰り返す(再現)ことができない。

しかも、

Even that may be optimistic.

Economist得意の短いフレーズです。

ということで、色々な人が明らかにしている、多くの主要な論文の結果は確認や再現が
できないという例が続きます。

A leading computer scientist frets that three-quarters of papers in his 
subfield are bunk.

fret」-いらだっている(「怒っている/文句を言っている」の方が自然)
bunk」-でたらめ

そして、間違った研究によって人の命が危険にさらされるリスクはそれほど高くないと
しても、資源の無駄使い(「it squanders money and the efforts of some of the 
world’s best minds」)を招いていると指摘しています。

その結果、必要とされる部分での科学的進歩が阻害される「機会費用」は大きく、
また、さらに増加していくことを懸念しています。

その理由としては、学者が増えて競争が激しくなった点を第一に挙げています。

少し前は数十万人だった科学者は600-700万人に増えており、その結果、自己検閲や
品質管理を重視する分別が失われている(lost their taste for self-policing and 
quality control」)。

アメリカで教授職を得ると年収は135,000ドル(裁判所の判事より高いそうです)で、
毎年生まれる博士たちのうちで大学に職を得るのは6人に1人の高倍率。

第二の理由は、出世至上主義(careerism)で、そのために研究成果の誇張や
いいとこ取り(cherry-picking)が助長されているという指摘です。

主要な科学雑誌は、提出された論文の10%以下しか載せない。

そして、最も目立つ成果の方が掲載されるチャンスが大きい(「The most striking 
findings have the greatest chance of making it onto the page.」)。

ということで、

研究者のうち3人に1人は、感覚に基づいて都合の悪いデータを取り除いて論文を
よく見せるという好ましくない行為を行っている例を聞いたことがあるそうです。

(「one in three researchers knows of a colleague who has pepped up a paper 
by …. Excluding inconvenient data from results “based on a gut feeling.”」)。

一方で、

仮説を証明できなかったという結果はあまり公表されない。

何が間違っているかを知ることは、真実を知ることを同じくらい科学にとって重要である
(「knowing what is false is as important to science as knowing what is true.」)。

これは良い言葉です。

それじゃ、こうした現状を改善するにはどうしたらよいかという提案に移ります。

If it’s broke, fix it」というサブタイトルです。
なるほどね。

対策のひとつとしては、遺伝子工学のように、研究成果の評価基準を厳しくすべきである。
特に統計的な分析が重要。さらに、実験計画は事前に登録して第三者が確認できる
ようにすることが望ましいと。

さらに、

Journals should allocate space for “uninteresting” work, and grant–givers 
should set aside money to pay for it.

ということで、派手さは無いけど、内容重視で論文を選びなさいと言うことですな。
また、「peer review」(同僚による評価)も厳しくすべきであると。

結論としては、

Science still commands enormous—if sometimes bemused—respect. But its 
privileged status is founded on the capacity to be right most of the time and 
to correct its mistakes when it gets things wrong. And it is not as if the 
universe is short of genuine mysteries to keep generations of scientists hard 
at work. The false trails laid down by shoddy research are an unforgivable 
barrier to understanding.

まあ、科学も、その昔は全く認められない時代があったわけですが、現在は、原子力の
問題などあるものの、まだ信頼されていますから。

2つ目の文書が面白いですね。特に「capacityという言葉の使い方が。

次の文章も、「not as if」ということで、「この世界には何代にもわたって科学者達を
真剣に取り組ませるような本当の謎が不足している訳でもない」という感じになりますね。

ということで、今回は非常に疲れました。読むのも疲れますよ。

2013年10月25日金曜日

「英語にハマりませんか?」No.74

All the President’s Menです。

ちょい話が細かくなっています。

前回は、ニクソン側の秘密(妨害)工作の現場長とも言えるSegrettiから手伝ってくれないか
という誘いを受けたLawyerShipley)にインタビューしますが、彼の話は、

Segretti seemed to be well financed

ということで終わります。背後には「big spender」がいるようだったと。

BernsteinWoodwardと相談し、Woodwardも興味を持つ。

Segrettiが誘いをかけた人間として、Shipleyは数人を名前を挙げたのでコンタクトしようと
するが、1人は回答を拒絶。1人は連絡取れず。

最後の1人は、Bernsteinの幼馴染の友達であることが判明。

幼馴染からの情報では、そういう誘いがあったという話は聞いているとして、

He was flabbergasted.(びっくりしたーすごい言葉です)  He served in the Army with 
Segretti …… thought he was not the type of guy to get into this type of mess

ほどなく、本人から電話があり、Segrettiから誘いは受けたが、自分は共和党ではないので
断ったという答。

一方、BernsteinSegrettiの居所を追う。

電話帳からこの名前で3人いることが分かり、そのうちの1人が本人の母親であった。ここで

Bernstein bent the rule a bit.  The Post had a firm policy that their reporters were 
never to misrepresent themselves

自分がポストの記者とは名乗らなかった。
これはよくないですね。そして、自分とWoodwardの家の電話を教える。

Segrettiは、Woodwardに電話してくる。

serious allegations involving political undercover work he had done for the Nixon 
campaign」について聞きたいというと、何も知らないと電話を切られてしまう。

2人は、Segrettiに直接接触することを決め(get his tail)、全国版のデスクから西海岸にいる
stringer」(reporter hired by a newspaper for special assignments on a story-by-story 
basis)(遊軍記者という感じ?)を紹介してもらう。

なるほどアメリカ広いですから。

それから、Bernsteinは、ジョージタウンのホテルに電話して、女性従業員を説得してSegretti
その他の宿泊記録を調べるように依頼する。

この書き方が面白いです

she was prevailed upon to search the records …..」となっております。
(「prevail on」で説得という意味です)

Bernsteinは、クレジット会社内部のソースを使ってSegrettiについての記録を入手する。

通常はFBIが「gobbling up with subpoena」であるが、記者でも入手できるのですね(もちろん
通報者は自分の名前を出さないことを条件とする)。

それによると、Segrettiは、71年の後半に全米を10以上飛び回っている。
特にワシントンが多い。

いずれの都市も選挙的には激戦区(key political states)である。カリフォルニアなどでは
主要都市を頻繁に移動している。

前述のstringerMeyer)に連絡してSegrettiへの取材を依頼する。
Meyerは、Marina del Reyにある家に張り込む(stake out)。

ここでちょっと、マリナデルレイについての説明があります。

あらゆる楽しいことが行われている場所(「represented the ultimate in swinging-singles 
living」)ということらしいです。

私も一度ちらっと案内してもらったことがありますが、豪華なヨットが並んだ、美しい場所でした。

最初に訪問した時は留守で、慌てた様子で2-3日でかけるといって出て行ったとの近所の証言。
ドアにマッチ棒をはさんで(なるほど!)数日後再訪すると落ちていたので(「a matchstick he 
wedged into the interface of the front door had dropped to the floor」一度でかけたようだ。

午後まで待っていると戻ってくる。
Friendly faceだがunsmilingな男。

民主党の予備選での活動について情報を得ているというと中に入れてくれる。
Shipleyのことについては何を聞いても知らないと答える。民主党大会での秘密活動やShipley
への勧誘について質問するが「I don’t remember」が多い。

それでも、物腰はものやわらかである(「His demeanor remained mild and affable」。

All sounds like James Bond fiction」というコメント(ありきたりですな)。

Meyerは、SegrettiLawyerとしての仕事、Shipley、矢継ぎ早に質問するが、
Segretti remained impassive」(冷静で動じない)

What about the name Bill Mooney, a false ID Segretti had said he might use?
Ridiculous.
Meyerが写真を撮り始めると、追い出される。

一方、Bernsteinの方では「Things were breaking」(突破口が開けてきたという感じ)。

ルーチンチェックしている司法省のソースにSegrettiの名前を知らないかと確認すると
(「it’s been a throwaway question(何気ない質問だったが))、
I can’t answer that question because it’s part of the investigation」という回答

ビンゴですね!

Bernsteinはさらに、Nixonの個人弁護士であるKalmbachについても聞くと、同じく調査対象
なので答えられないという。

Shipleyの言っていた「a big spender by whom Segretti has been bankrolled」(資金
供給する)ではないかという疑いが高まってくる。

Bernsteinは、Segrettiの素性をさらに探ると、彼の卒業したUSCの卒業名簿から、同窓生として
Zeegler(大統領報道官)を初めとしてホワイトハウスの職員(CRPに関わっていた)が何人かいる
ことが判明。

さらに調べると、これらの卒業生はUSCマフィアと呼ばれ、ニクソンの選挙支援でかなりの役割を
果たしていたらしい。彼らは大学キャンパスで政治団体に属し、投票を妨害したり、対抗馬の
陣営にスパイを送り込んだりといった「electioneering “ratfucking”(がは、凄い言葉です。
辞書にもあります)」を行っていたようである。

司法省のソースにこれらの点を確認すると、USCマフィアの1でホワイトハウスにいるChapin
Segrettiの関係は暗に認めます。

さあ、地味な調査が身を結んで、あたらしい展開が少し見えてきました。

2013年10月18日金曜日

「英語にハマりませんか?」No.73

Economist10/12号です。

今月号は「World Economy」という特集です。

冒頭の記事は、

The world economy
The gated globe
Governments are putting up impediments to globalisation. It is time for a fresh 
wave of liberalisation

Gated」と聞くと頑強に守られた、米国の高級住宅地区を思い起こしますが、そうではなく、
多くの政府がグローバル化に反発して規制の壁を設けていることを意味しているようです。

ちょっとひねった書き出しです。

Imagine discovering a one-shot boost for the world’s economy. It would revitalise 
firms, increasing sales and productivity. It would ease access to credit and it would 
increase the range and quality of goods in the shops while keeping their prices low. What economic energy drink can possibly deliver all these benefits?

クイズ形式になっています。「economic energy drink」という表現が面白い。
日本人の専売特許だと思っていたドリンク剤、最近外国製も色々出てきていますね。
One-shot boost」というのはカッコいい表現ですね。効きそう!

deliver」-この言葉がなかなか思いつきません。実現する(手元に届ける)という
ニュアンスもありますね。

答は当然のことながら、

Globalisation can. Yet in recent years the trend to greater openness has been 
replaced by an enthusiasm for building barriers—mostly to the world’s detriment.

ところが、グローバル化を阻害するようなバリヤの構築の意欲が高まっている
そして、それは世界にとって害になることが多いというわけです。

世界はこれまでの恐慌や戦争の苦い経験から、保護主義は事態をさらに悪くするだけである
ことを学んできたと前置きした上で、最近の傾向として、

Yet a subtler change took place: unfettered globalisation has been replaced by 
more selective brand...... policymakers have become choosier about whom 
they trade with, how much access they grant foreign investors and banks, and 
what sort of capital they admit. They have not built impermeable walls, but they are 
erecting gates.

前ほど露骨ではないが、制約の無いグローバリゼーションに代わって選択的な政策(brand
という言葉は面白いー目立つという感じなんでしょうね)が取られ始めている。

えり好みが厳しくなっている。従って、以前のように障壁を築く代わりに、ゲートを設けている
という表現をしています。

一方で、
多くの政府や機関は開放の努力も行っているとした上で、Economistの結論としては、

But the fate of globalisation depends most on America. Over the past 70 years 
it has used its clout to push the world to open up. Now that clout is threatened 
by China’s growing influence ......Barack Obama’s decision to skip an Asia-Pacific 
leaders’ summit in Bali to battle the government shutdown at home was ripe 
with symbolism:...... Mr Obama must reassert America’s economic leadership 
by concluding a TPP, even one with imperfections, and force it through 
Congress.......

要するにアメリカの役割が重要であるということです。

米国はこれまで70年間も開かれた世界を目指して影響力を行使してきたが、それが中国に
よって脅かされようとしている。オバマ大統領のAPEC会議の欠席はその象徴と言えよう
ripe with symbolism)。不完全でもいいから、TPPの取りまとめにリーダーシップを発揮
しなきゃダメだよと。


次は最近の目玉ニュースです。

The Fed’s new boss
The dove v the desperadoes
Good news at the Fed does little to offset the dreadful mess on Capitol Hill

desperadoes」-ならず者(下院の議員ですか)

イエーレン議長の就任は良いニュースだが、米国議会の実にひどい混乱を相殺する効果は
少ないということだそうです。

論調としては、新しい議長が努力しても、アメリカの経済成長のペースは鈍化するだろう
という見通しを述べており、結論としては、

Even if Ms Yellen manages such tensions adroitly, there are limits to what the 
Fed can do. Central banks can help prop up growth in the face of spending cuts, 
as they have been doing in much of the rich world in recent years. But they 
cannot protect an economy against destructive politicians. If America’s recovery 
is to continue, let alone accelerate, congressional Republicans must come to 
their senses, and fast.

中央銀行というのは、財政支出が削減されている時に成長を支えることはできるが、
破壊的な政治家」から経済を守る力は持っていない。ということで、もしアメリカの景気回復を
継続させる――加速は無理としても――には、共和党議員が分別を取り戻さなきゃだめだよ
という警告です。


おまけと言っては何だが、その他、目についた主要な記事のタイトルを挙げます。

Water in China
Desperate measures
Rivers are disappearing in China. Building canals is not the solution

ひどい状態が浮かんでくるようで、あまり読みたくない記事ですね。


African governance
Too many dinosaurs
The survival of ancient tyrants spoils Africa’s record of improving democracy

アフリカも独裁政権が多く、長く続いていますから。

といったところで今週はおしまい!