2013年7月31日水曜日

「英語にハマりませんか?」No.54

今回はEconomist7/20号のトップ記事です。

The curious case of the fall in crime
Crime is plunging in the rich world. To keep it down, governments should focus 
on prevention, not punishment

世界的な景気後退にも関わらず、先進国では大幅に犯罪が減少しているそうです。

これがEconomistのトップニュースになるのも面白いですね。さて何が起きているのか。
少し長くなりますが、ある問題についてさまざまな角度から論証していくという手法を学
上で参考になるので、がんばってまとめてみました。

記事は、

In the 1990s John DiIulio, a conservative American academic, argued that a 
new breed of “superpredators”, “kids that have absolutely no respect for human 
life and no sense of the future”, would terrorise Americans almost indefinitely. ….

(「人間を全く尊敬せず、未来についての意識もない子供「スーパープレデター」が出現する
だろうと主張する学者がいた」)というおどろおどろしい書き出しで始まります。

この時期、専門家は口をそろえて、犯罪は増加し続け、一般市民は厳重に守られたコミュニ
ティーgated communityにこもることになると予想したとしています。

ところが、冒頭の学者は自説を撤回(recant)します。

1990年代の時点で既にアメリカの都市はより安全になり、その他の先進諸国でも同様の
傾向が見られるようになったためです

あらゆる先進国は1970年代以降で一番安全と言える状態にあります。また、予想に反して、
景気後退も犯罪低下の傾向に影響を与えていません。
(「Confounding expectations, the recession has not interrupted the downward trend.

犯罪の中でも著しく減少しているのは、強盗(英国/ウェールズにおける銀行その他の金融
機関の強盗件数は1990年代の約500から69に減少)、あるいは、窃盗(ニューヨークで
盗まれた車の台数1990年代の147,000台から2012年の1万台弱まで減少)。

また、オランダやスイスでは、麻薬の密売人や窃盗犯は町から姿を消している等。

こうした実情を紹介した後、記事では、まずこれまでの通説が否定されるような状況が
起きていることを指摘します。

Cherished social theories have been discarded. Conservatives who insisted 
that the decline of the traditional nuclear family and growing ethnic diversity 
would unleash an unstoppable crime wave have been proved wrong.....」

これまで尊重されてきた理論が覆されている。核家族と多様な民族の混在が犯罪を後押し
するという保守的な議論は誤っていることになった。)

一方で、不平等さを改善しない限り犯罪は減らないという左翼の主張も馬鹿げて聞こえる
ようになっている。
(「Left-wingers who argued that crime could never be curbed unless inequality 
was reduced look just as silly.」)

ということで、
犯罪減少の原因に話題は移ります。原因はひとつではなく、さまざまな要因が組み合わさっ
ていることが指摘されます。

(「There is no single cause of the decline; rather, several have coincided.」)

西側諸国の人口が高齢化しており、若者(より犯罪を犯しやすい)の数が相対的に減少して
いる。そして、警察の活動はニューヨークを初めとする大都市を中心として改善されており、
コンピュータによる犯罪データの分析も進んでいる(マンハッタンでは窃盗犯罪が95%以上
減少)。

コカインやヘロインの流行も下火となっている(「The epidemics of crack cocaine and 
heroin appear to have burnt out」-ちょいひねった表現です)。

中でも、最も大きな要因と考えられるのがセキュリティ対策の向上という指摘です。
(「The biggest factor may be simply that security measures have improved.」-この
文章構造はちょっと変わっています)

たとえば、銀行強盗は、防弾スクリーン、警備の強化、紙幣のマーキングによってほとんど
発生しなくなっている(「bulletproof screens, security guards and marked money 
have all but done for bank robbery.」)(カンヌの宝石強盗はすきを突いた?)

all but done for」―ほとんどだめになる(死ぬ、負ける)

その結果、一部の犯罪は引き合わないものになっている。犯罪者への調査結果が示して
いるように、犯罪を抑制する大きな要因は捕まる恐れであるとしています。
(「Some crimes now look very risky—and that matters because, as every survey 
of criminals shows, the main deterrent to crime is the fear of being caught.」)

ということで、新しい項目に移ります。

Many conservatives will think this list omits the main reason crime has declined: 
the far harsher prison sentences introduced on both sides of the Atlantic over 
the past two decades.

(それでも、保守主義者の多くは、上記のリストに上げられていない大きな要因――米国と
欧州で犯罪の厳罰化が過去20年間に行われたこと――があると考えているようです。)

この説は、米国では当てはまるが(現在国民100人に1人の割合で監獄!)、服役囚の数が
減少しているオランダとドイツでも犯罪が増加していることの説明がつかない。

それどころか、厳罰化――特に一部の犯罪に対する厳罰化は逆効果となっているようだ
という指摘。
Harsh punishments, and in particular long mandatory sentences for certain crimes, increasingly look counterproductive.」)

mandatory sentencing」―厳罰化の義務づけというのもありかな。

アメリカの刑務所は服役囚の老齢化が進んでおり、犯罪年齢を過ぎている(「past their 
criminal years」という面白い表現です)。

また、刑務所は更生よりも処罰を優先するため、初犯の数は減っているが、常習犯は増えて
いるという状況も起きている。

政治家もこうした状況を認識しているようです(「Politicians seem to have grasped this」)。

米国では、議会で新たに可決される厳罰化を適用する法律の数は減少している共和党が
強い南部の州でも麻薬中毒者に対して投獄よりも治療を優先する政策を取り入れている。
(「adopted policies favouring treatment over imprisonment for drug users」)

ということで、そろそろまとめに入ります。

警察の体制も、犯罪への対応への負担が少なくなっていることを考えると、重点を犯罪防止に
振り向けることが可能となっている。
(「Now that officers are not rushed off their feet responding to car thefts and 
burglaries, they can focus on prevention.」)。

特に、データの解析から犯罪を予測する技術に期待が持たれる。また、多くの国で地域の
パトロールを専門とする「community support officer」と称する民間人の活用を始めており、
プロの警察官が実際の犯罪対応に専念できるようにする試みが行われている。

(「More countries could use civilian “community support officers” of the sort 
employed …… who patrol the streets, freeing up better-paid police officers 
to solve crimes.

最後に、警察官がより高度な訓練を受けることで新しい犯罪にも対応できる(「Better-
trained police officers could focus on new crimes.」)ということを意味するが、警察が
発展する技術に適応しているということは、犯罪者も同様であることを認識する必要が
ある(「As policing adapts to the technological age, it is as well to remember that 
criminals are doing so, too.」)という結論です。

ありきたりではありますが、警察が最新技術への対応を怠るといつの間にか、犯罪が引き合う
環境が醸成されてしまうという警告でしょうね。

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